マリアージュの国、フランスのおいしい食卓

フランスで見つけたおいしいマリアージュのレシピで作って食べての覚え書き。それからフランスの主にテーブルまわりのあれこれ走り書き。

残り物には福がある。アッシ・パルマンティエと、レトロなマッシャー。



近頃は料理好きの夫が腕を振るうことが多くて、このアッシ・パルマンティエ(hachis parmentier)も例外ではございません。

アッシ・パルマンティエは、フランス家庭料理の定番の一つ。

「アッシ」は挽いた肉や魚、「パルマンティエ」はマッシュポテトを表すのだが、この「パルマンティエ」とは、人の名前。

17世紀半ばから18世紀初頭を生きた軍属の薬剤師であり農学者、そして栄養および衛生学者でもあったアントワーヌ・パルマンティエの名から取られているのだとか。

 

でもどうしてこの人の名前が?

実はこのパルマンティエ氏、国王ルイ16世に飢餓を救うものとしてジャガイモを献上し、さらにじゃがいもを世に広めるためマッシュポテト含むさまざまなジャガイモレシピを考案しては紹介したお方。そんな氏へのオマージュから、なのだそう。

たしかにこの方のおかげで、じゃがいもは今ではフランスで愛される食材の一つになりましたもんね。

わたしがよく行く八百屋さんでは、常時5種類は違う品種のじゃがいもが置かれていますよ、パルマンティエさん。

 

よく行く八百屋さんの壁にはじゃがいもの品種とそれに合う調理法が示された看板が。
写真に収まっているのは看板の左半分。

 

さて、今回夫がアッシ・パルマンティエの「パルマンティエ」部分を作るのに使ったのは、彼のお母さんが使っていたマッシャー。

夫によれば、「直接お母さんに聞いたわけじゃないから正確にはわからないけれど、たぶん1960年代くらいのものかなあ」とのことで、たしかに年季が入っている。

組み立て前。

組み立て後。
左はマッシュポテトやポタージュ向き、右はフライドポテト向きの袋売りじゃがいもたちと。

お鍋のような部分はあちこちボコボコ、取っ手を回せばぎこちなくギシギシ、という感じだけれど、何十年も使われてきた道具には他にはない愛着がわくというものです。
今でも同じシステムのマッシャーが売られていはいるのだけど、うちでは頑なにこの道具を使い続けております。

 

さてアッシ・パルマンティエがフランスで定番の人気家庭料理なのは、みんな大好きマッシュポテトが使われているということもあるでしょうが、残り物を有効活用できるから、でもあります。

ポトフのような煮込み料理もよし、ローストチキンや鴨のコンフィでもよし、余ったハムでも魚でも何でも来い。

 

ちなみに今回の我が家のアッシ・パルマンティエには、ちょっと古くなってそのままいただくには食指が動かないなというチーズも刻んでパラパラ。

夫は焦げ過ぎた、と言っていたけれど、一番上にかけたパン粉がカリカリして楽しい食感のアクセントに。

 

ごちそうさまでした。

 

シナモンとマーマレードと、味の好みのお国柄。

もうこれで終わりにすると言いながら、のイギリス話。

今回の旅行の自分みやげとして、ニューヨーク風のベーグル、そして名物「ホットクロスバン」なるパンを買ってきた。

名前も、それにちなんだ英語童謡も知っていたけれど、未だ食べたことのなかった憧れパン。

 

パン表面に十字の入ったホットクロスバン。

フランスに戻ってから毎朝それを食べていたのだが、その香りを嗅いで顔をしかめたのは夫。

「シナモンの香りきつ過ぎ…。」と呟きながら。

 

考えてみれば、フランスにももちろんシナモンは存在するし、お菓子や料理にも使われるけれど、それはほんのわずかな量であることが多い。

だからこのホットクロスバンや、それこそ名前にその名が入るシナモンロールの類はフランスでは見当たらない。

 

でもイギリスでは人気だよね、がっつりと効いたこのシナモン感。

そしてレーズンやカラントとの組み合わせも。

そういえばアメリカでも人気だけれど、この「シナモンレーズン」の組み合わせはイギリスとアメリカとどちらで先に登場したのだろう。

あるいは他の国?

いずれにしても、かつての宗主国イギリスと植民地であったアメリカの一般的な味の好みが似ているというのはとても興味深いことだと思う。

 

例えば、ジュースでよく見るストロベリー&キウイの組み合わせ。

イギリスとアメリカ双方で人気があるけれど、これもフランスでは見かけない。

もちろんざくっと味の好みの一般化はできないけれど、それぞれの国の人々の好みの傾向というのは確実にある。

 

何がどうなってそういう傾向が生まれるのか。

その土地で採れる食材、脈々と受け継がれた料理法や貿易の歴史やら、いろいろなものが絡んでいるのだろうと想像するけれど、これだけ輸入物が手に入りやすくなった現代でも変わらずその好みの傾向が存在するのが面白い。と思う。

 

もひとつおまけにイギリスもので、マーマレード

これ、イギリスでは伝統的にとても人気があるけれど、フランスではいまいちだ。

そもそも、柑橘系のジャムというのが他の果物のものと比べて人気薄の印象。

 

先日、あるフランス人女性とジャムの話になり、マーマレードは好きか尋ねてみたところ、うっと顔をしかめたので内心、やっぱりか、と思ったのだった。

彼女いわく、ジャムを食べるのは朝食のときが多いけれど、朝に酸っぱいものは食べたくない。マーマレードはヨーグルトに混ぜて食べるならありかな、ということで。

フランスの朝食は十中八九甘いもの。やさしく一日を始めたい。

そこにマーマレードやこれもイギリス名物のレモンカードなどではパンチが効きすぎる、というわけか。

 

うちの柑橘ジャム系三人衆。

たしかに、以前フランス人の親戚が我が家に泊まりに来た日の翌朝、柑橘系ジャムとその他のジャムと3つくらいお出ししたのだが、柑橘系には誰も手をつけていなかったっけ。

その時はその人たちの好みなのかなと思っていたけれど、おそらくこれは一般化しても大丈夫そうな気配。

わたし自身は柑橘系のジャムやマーマレードが大好きなので、今回イギリスでマーマレードと(砂糖が一番少ないものを選んだらスペインのものだった)レモンカードを買ってほくほく。

 

ところでわたしがフランスに来て感じたこちらの人々の好みの食材、あるいはお菓子の風味3つ。

それはラズベリー、ココナッツとヘーゼルナッツ。

この3つはいろいろなタイプのお菓子でよく使われていて、ああ、すごく好かれているんだなあ、と思った記憶がある。

 

日本ではグレープ味のお菓子が多いけれど、これも好みなのかしらん。

 

 

2022年クリスマスの思い出。③クリスマスとノエルと

2023年も早三週間が過ぎようとしている。

一度始まってしまえば、あっという間に月日が過ぎていくのが一年。

だもの去年のクリスマスの話など早く終わらせた方がよい。

 

去年のクリスマスは義妹が暮らすロンドン郊外で過ごしたが、クリスマス当日のテーブルはフランス風。

フランスを離れて暮らす義妹のため、夫はフランスで言うクリスマス、ノエルの食事を再現してあげたかった。

だからいろいろな食材を保冷バッグに詰め込んで、車の中もなるべく暖かくし過ぎないように気をつけて運んだのだった。

 

 

一概には言えないが、フランスでクリスマスなど人が集まって食事をするときはお昼に始めることが多い。そして終わるのが夕方。

食前酒をいただきながら話に花を咲かせるフランス人が大好きな時間、アペリティフあるいはアペロの次はテーブルへ。

 

クリスマスの食事の前菜としては三大定番食材があって、それはスモークサーモン、フォワグラ、そしてコキーユ・サンジャック、ほたて貝だ。

ちなみにフランスのスモークサーモン消費量はヨーロッパ一なのだとか。

 

ほたて貝の調理法として一番ポピュラーなのが、写真のようなほたての貝殻を器に使ったグラタン。「ブルターニュ風」と名前につくレシピもある。

貝殻の中にはほたて貝、エシャロットや玉ねぎと白ワインソース。そこにマッシュルームが入ったり、にんにくやパセリが入ったり。

実は写真のものは冷凍もの。いくつものメーカーが発売していて味もピンキリだけれど、今回のこれはとてもおいしかった。

 

 

メインはこれもフランスから持って行ったシャポン鶏のロースト。

シャポンは去勢した雄鶏で、肉質が柔らかく可食部分が大きい。

「ローストビーフ? ノエルにはシャポン!」と張り切った夫がこれもフランスから持参の詰め物を入れて焼き上げたのだった。

 

もちろんシャポンはとてもおいしかったのだけれど、個人的にはそのつけ合わせの根菜のオーブン焼きが滋味深くてとても気に入った。

 

 

人参、かぶ、パネ(英語ではパースニップ)をにんにくとオリーブオイルでシンプルにオーブンで焼いたもの。

ホリデーシーズンのお腹には、こういうものがとてもありがたく感じたりして… とは贅沢な物言い。

けれど本当においしかった。

 

お皿の上にはイギリスのヨークシャープディングとグレービーソースを添えて。

これはイギリス暮らしの姪のご所望。

 



正直なところを言うと、アメリカに住んでいた頃からグレービーソースのおいしさがいまいちよくわからないのだが、それでも初めていただいたヨークシャープディングに心躍らされてなんだかおいしくぺろり。

 

デザートはビュッシュ・ド・ノエル。

今は亡き義母の手書きのレシピを見ながら、前日義妹とわたしが一緒に作ったもの。

 

 

こってりしたバタークリームが、昭和の子どものわたしにはとても懐かしい。

外側はチョコ、内側のロール部分にはコーヒー風味のバタークリーム。

ビターチョコは苦手、コーヒー風味など食べたこともない娘がぱくぱく食べていたのだから不思議だ。

繋げていきたい、家族の味。

 

 

これでいい加減、クリスマスの話はおしまい。

2022年クリスマスの思い出。②イギリスで見つけたマリアージュ

イギリスからフランスに戻って2週間。

すでにいろいろ忘れてしまうものですね…。

あらら。

早いとこ書き留めておかなくっちゃ。

 

とりあえず、食べ物のことを書いておこう。

 

イギリスに来たなら、やっぱり食べずには帰れないこれ。

まずはこれ、フィッシュアンドチップス。

ものすごく好きなものではなくても、やっぱり本場に来たなら本場のものを食べたいと思うのは人の常。たぶん。

 

しかしこのフィッシュアンドチップスが、とてもおいしかったんです。

30センチはあろうかという大ぶりのタラは肉厚でふわっと柔らか。そしてとってもほくほく、ジューシー。

今までに合計3回だけいただいたフィッシュアンドチップスの中ではダントツで一番!

わざわざ義妹が車を走らせて買いに行くだけのことはある。

 

そして姪おすすめのポルトガルピリ辛ソース、その名も「ピリピリソース」が良く合いました。

聞けばイギリスで人気なのだそうで、たしかに義妹宅がある町の駅界隈だけでもピリピリチキンを売る専門店を2、3見つけましたね。

 

インド料理にしてもそうだけれど、イギリスの人たちはスパイスの効いた料理が好きなんだなあ、とは今回の旅で思ったことです。

 

イタリア風カフェチェーン、カフェ・ネロ。

イギリスで見つけたもう一つのマリアージュは、カフェのパニーニサンドイッチ。

と言っても、ポスターの写真を見ただけで食べてはいないのですが。

 

ブリーチーズ、ベーコン、クランベリーという組み合わせがとても新鮮で、フランスではまず見かけなそうだなあと思いました。

とくにクランベリーというのが、イギリスっぽいなあというのがイギリスをよく知らないわたしの感想、です。

 

今日はここまで。

子どもを迎えに行く時間になってしまった。

 

 

 

 

1月はガレット祭り

まだイギリス旅行のことを書き終えていないけれど、今のことも忘れてはならない。

ということで、ガレット・デ・ロワ

 

この投稿に出てくるパッケージ買いのガレットは、残念ながら人工的なアーモンドの風味が強すぎておいしくなかったのでした。

 

こうなるとリベンジでしょうか。

最近、毎日ガレットを食べているので、正月太りならぬエピファニー太りになりそう。

 

2023年になったけど… 2022年クリスマスの思い出。①お酒が飲めれば健康だ

2023年になって今日ですでに5日。

でも書き初めは去年のクリスマスのこと。

 

去年は12月に入って心機一転はてなブログに引っ越してからちょこちょこたくさん書きたいと思っていたのに、体調不良で寝込んでしまった。

その数日後にはクリスマスを過ごすために義妹が住むイギリスに行く予定になっていたのだけど、おそらくは行きたいという気持ちが後押ししてくれたのか、渡英前日、自分としては奇跡的な快復。

無事、フランスのカレー港からカーフェリーに乗りこみ、イギリスのドーバー港へと向かうことができたのでした。

 

ドラフトビールを頼んだら1パイントで出てきた。イギリスの船に乗っていることを実感。

フェリーの中でギネス1パイントを飲み干した時、自分の体調回復を心から確信。

 

ドーバーの町が見えてきた。もうすぐイギリス上陸!

今日はここまで。

今年の目標、中途半端に思えてもとにかく投稿!

 

味噌とセロリの餃子。お皿に乗ったお国柄。

あんなにもくもくと湯気が立っていたのに、写真に収めきれず残念無念。

昨夜はご近所に住む中国人のお友達のお宅へお呼ばれ。

中国料理をお店で食べたことはあっても、また中国料理らしきものを自宅で作ったことはあっても、中国人が家庭で作る中国料理を食べたことはなかったのでとても楽しみだった。

おまけに大好きな餃子を作ってくれるというではないですか。

そのお友達は中国の北部、小麦粉を使った料理をよく食べる地方の出身なのです。

 

お宅に到着すると、彼女は餃子の餡を作り終えたところ。
中には味噌を入れているのだそう。
味噌を入れるんだ…!
わたし自身は餃子の餡に味噌を入れたことが無かったので、やたらとエキゾチックに感じて興奮してくる。
日本でも餃子の餡に味噌を加えることはさほど珍しいことではないのにね。

 

さて、「餡にどの野菜を入れる?」と彼女。
彼女が指す指の先にはブロッコリーとセロリの姿が。

お、なんだか意外! 西洋野菜、しかも姿かたちからなんとなく中に入れにくそうなブロッコリー、そして香りの強いセロリとは。

「何でも好きな野菜を入れていいんだよ~」と言う彼女に、じゃあ、とセロリをお願いする。
最近、NHK WORLDの料理番組『Rika's TOKYO CUISINE』で見たセロリと鶏ひき肉の、ごく簡単なのにとても滋味深いスープを作ってあらためてセロリに惚れ直したところだったので。

 

ちなみに、そのスープの正確なレシピを確認したくて番組サイトのレシピページを訪問したのだけれど見つからず。
うろ覚えのレシピでは、薄切りにしたセロリの茎と葉をごま油で炒め、そこに鶏ひき肉を入れて炒め合わせ、水を加える。顆粒チキンスープの素、酒、酢、しょうゆを加えたらできあがり。というもの。

酢を入れてコクを出すのが味の秘訣、とRikaさんがおっしゃっていたのを覚えている。

 

さて、餃子。

皮は小麦粉と水で作る。

中国の小麦粉とフランスの小麦粉は香りが違うのよ、と彼女は残念そうな顔をしていたけれど、たしかに日本の小麦粉とフランスの小麦粉も香りや味が変わってくるものね。

品種の違いもあるだろうけどその国の、その地方の湿度なんかも関係するんじゃないかな、とは夫の弁。

 

一人が皮を伸ばし、二人が皮に餡を詰めての共同作業。

友達が小さくちぎった皮の記事を薄く伸ばして、わたしと夫が餡を詰めていく。

わたしは市販品の生の餃子の皮を使ったことはあるけれど、生地から作った生の皮に餡を詰めるのは初めてで、そのにゅっと皮が伸びる感じが触っていてとても楽しかった。

これは是非子どもにもやらせてみたい。

 

夫は餃子の皮に餡を詰めて形を整える作業が初めてで、皮から餡がはみ出ていたりしたけれど、これはこれで可愛らしい。

みんな違って、みんないい。餃子も同じというわけだね。

友達が餃子の一つを小籠包風の形にしてくれた。

おお、という歓声。

こんな風にわいわいやりながらお料理するのは楽しいな。

 

そうそう、なるほど、と思ったのがすまきに餡を詰めた餃子を巻きすの上に並べていたこと。

そうか、これなら餃子がつきにくい。

 

 

さて、形を整えた餃子の半分は茹でて水餃子に、もう半分は焼き餃子に。

餡にしっかり味がついているので、たれをつけなくてもちょうどいいお味。

 

驚いたのは、ド偏食で野菜はもちろん大の苦手のわが8歳の娘がペロリと食べていたこと。

セロリを入れたからどうかなと思っていたのだけれど。

でもあえて何も言わないで食べさせてみたところ、パクパクと食べているではありませんか。

心の中で、ヤッター!と叫ぶわたし。

セロリは細かく刻んであったし、味噌の風味も手伝って食べやすくなっていたのかな。

それに何と言っても、大好きな餃子だから食べようという意欲が違う。

 

友達は餃子に加えて、鶏のしょうゆ煮?、ブロッコリーオイスターソース炒め、豆腐ときのこのスープを用意していてくれたのだが、そのどれからもものすごい熱量が伝わってくる。

湯気がもくもくと立ち上る大皿をテーブルに運びながら、あらためてわたしは中国料理は火の料理なんだな、と思っていた。

パワー、勢い、潔さ。

自分が持つ中国のイメージにもつながったりして。

料理っておもしろいな。