マリアージュの国、フランスのおいしい食卓

フランスで見つけたおいしいマリアージュのレシピで作って食べての覚え書き。それからフランスの主にテーブルまわりのあれこれ走り書き。

ノルマンディーの古都、ルーアンと「第六感」。

フランスにいると、個人の、あるいは自分自身の幸せを求める感覚が日本とは違うなあと感じることが多々あります。

いや感覚、というよりは追求度でしょうか。

 

だから例えば、たとえカップルの間に子どもが生まれても、育児によってカップルとしての時間を過剰に犠牲にしません。

いちおう、「過剰に」と入れてみました。

やはりもちろん、全く犠牲にしないということはないでしょうしできませんので。

でも、決して無理はしません。

潔く(?)子どもを誰かに見てもらい、カップルで出かけていきます。

そして自分の気持ちを満たし、幸せな気分でまた子どもと向き合うわけです。

 

前置きが長くなりましたが、先週のバレンタインデーに夫と二人でレストランへ行って参りました。

我が家はかなりわたしの日本寄り育児感覚に支配されているので、こんな風に二人でレストランに行くのは何年ぶりかのことです。

かつ、夜のレストランというのはこの8年半で初めてかも。

 

行き先はノルマンディーの地方都市、ルーアンにある「Le 6ème sens」。

以前こちらでランチをしたという友人夫婦が勧めてくれたのですが、「第六感」というお店の名前の通り、心地よく、かつ刺激的な感覚を与えてくれるお店でした。

 

旧市場広場にほど近い路地に佇む「Le 6ème sens」

 

お店の中に一歩入ると、左手に広がる丸天井の広間がなんだかミステリアスな雰囲気。

お店のサイトを訪問してみたら、1749年に建てられたのだとか。

もともとは何かの貯蔵室かと思いきや、市庁舎になるはずだった建物だったそうで。

 

なるべく早く帰宅したいわたしたちが予約したのは開店時間の19時。

わたしたちがその日一番初めに到着したお客でした。

 

この後あっという間にカップルで埋まった広間

 

わたしたちが注文したのはバレンタイン・コース。

料理に合わせたお勧めワインをグラス3杯つけて。

でもその前に景気づけの(?)アペリティフも飲んでしまったら、やっぱり3杯は多かったなというのは後の祭りの感想です。

 

定番カクテル、コスモポリタンは大きめグラスでやってきた

 

アペリティフは量を飲みたくなかったので、脚の長いカクテルグラスをイメージしながらコスモポリタンを選んだのですが、登場したのはロックグラス。

ストローが2本ついていたから、カップルでどうぞ、みたいなことだったのかしら。

結局全部自分で飲んでしまいましたけど。

泡の上にふわりと乗った2枚のベビーリーフがとても可愛かったな。

 

さて、アミューズ・ブーシュからコースの始まり始まり。

アミューズ・ブーシュは何が出てくるかのお楽しみ

 

写真左から、お米のチュイルに乗ったスモークハドックとアボカドのクリーム、コンテチーズのグジェール、ベルガモット風味のグラブラックス(サーモン)。

塩味、スモーキーな薫り、まろやかさ、甘味、香味…。

ひと口、またひと口、さまざまな味の調和。文字通りお口に楽しいコースの始まりで、否が応でもこの続きにわくわくしてきます。

 

海藻を思わせる飾りつけの葉がきれい。
お皿の模様が波のようです。

 

前菜はラングスティーヌ海老のラビオリとロースト、野菜のコンフィとビスク。

ラビオリは皮が薄めで口当たりがとてもすべらか。ローストした方も身がやわらかで、繊細なコクのあるビスクととても好相性でした。

とろけるような野菜のコンフィも美味しかったな。

こういう、付け合わせ的な野菜が美味しいと、とても得したような気分になります。

 

ちなみに、前菜のもう一つの選択肢は牛ほほ肉のコンフィが入ったクロメスキスでした。

わたしはクロメスキスを見たことも食べたこともありませんが、聞けばもともとはポーランド料理の、コロッケに似た揚げ物なのだそうです。

 

続いて主菜。

  • カジ・ド・ヴォー(仔牛の背中とお尻の間あたりのお肉)のロースト、菊芋のデクリネゾン、ジュ・コルセ、黒トリュフと共に
  • 石平目のロースト、バターナットのコンフィとロースト添え、レモンバターソース

… なんて、ありそうな日本語を当ててみましたが。わたしも夫も、この二つから石平目をいただきました。

 

バターソースは重そう、と思いきや…

 

フランスでお魚をいただくときは、必ずハードルをかなり下げてから一口目を口に運ぶわたしですが(高級レストランならそんなことも必要ないのでしょうが)、この石平目は肉厚、ふっくらしていて自然と「おいしい」という言葉が口から洩れました。

そして重いかな、重いかな、と警戒していたバターソースはレモンがキュッと効いていて、しつこさがまったく感じられない。でも酸味がきついというわけでもなく。

結果ペロリでした。

 

そしてメインに負けないくらい美味しかったのがバターナット。

控えめに言ってもあまりファンではない野菜なのですが、ほわんとしたやさしい甘みがバターソースと相まって、これだけお代わりがほしいと思うほどでした。

 

ところで、バターと言えば。

こちらのお店で出されていたのがこちら。写真がぼけていますが…

 

もうかなり取ってしまった後のお姿

 

ブルターニュ地方の小さな港町、サン・マロからのスモーク塩バターです。

これを自家製のプチパンにつけていただくのですが、何と言いますか、これがすばらしいコースの名わき役になっていました。コース全体を面白い味の旅にしてくれていたように思います。

 

ちなみに、モン・サン・ミシェルから車で一時間ほどのところにあるサン・マロはかつて私掠船の要塞だった町。フランスで人気の観光地です。

 

さあ、主菜が終わってフロマージュ以前の記事でも書きましたが、何となくフランスでチーズを「チーズ」と呼ぶのは禁忌な気がして「フロマージュ」と呼んでおります)。

 

pariskarakoichijikan.hatenablog.com

 

普段コースメニューでフロマージュいただくことはほとんどありません。

その後のデザートのことを考えると余裕がありませんので…。

でも今回のコースではフロマージュを取らないという選択肢がなかったので、そのままいただきました。ここまでの料理の量がお腹にちょうど良かったのも幸運。

 

バレンタインコースに重量感はいらないのであった

 

フロマージュは薄く切ったブリーとコンテにトリュフをかけて。

添えられているのは花椒風味の洋梨マーマレードとベビーリーフだったのですが、このベビーリーフに絡められたドレッシングが甘めの味つけで、同じお皿に乗ったその他の食材ととても良く調和していました。

 

そしてデザート。

ホワイトチョコレートとフランボワーズ、ピスタチオサブレのドームです。

 

どことなくpomme d'amour(りんご飴)を思わせるかたち

 

はらはらと舞った粉雪と、芽吹き始めた若芽を思わせるようなプレゼンテーションは今の季節にぴったりだなと思いました。

ドームの中はと言うと…

 

 

雪のようにふわふわのホワイトチョコレートのムース。

わたしには少し大きめサイズに感じたデザートですが、フランボワーズとピスタチオはフランス人が大好きな味だし、きっと満足する人が多かったサイズ感なのかな。

 

添えられた小さな焼き菓子ってなぜかとてもうれしい

 

最後は苦いエスプレッソでキュッと締め。

添えられた焼き菓子はヘーゼルナッツのマンディアンチョコとオレンジの花のマドレーヌ。

 

あ。ヘーゼルナッツもまた、フランス人に人気の高い食材… 違う言い方をすれば、人気ゆえの大定番。ここでもまた大満足しちゃう。わけですなあ。

 

ごちそうさまでした。