ゴダールの映画タイトルみたいにしてみました。
さて、先のお料理教室の際、会場のフロマージュリーヒサダで買ってきた日仏フュージョンチーズの食べ比べです。
柚子も抹茶も桜も迷ったけれど、結局選んだのは古酒でウォッシュしたマロワ―ル、ウィスキー風味のブルー、そしてほうじ茶とごま、それぞれでくるまれた牛のフレッシュチーズ。
ところでそれぞれのチーズの話に入る前に、この「チーズ」という呼び方に違和感を覚え始めたのはフランスに暮らし始めてほどなくしてのことです。
フランスの加熱殺菌されていない生乳から作られたチーズはやっぱりけた違いにおいしくて、思わずわたしは「これはもう『チーズ』とは呼べない。『フロマージュ』は『フロマージュ』である」と思わずにはいられなかったものです。
よく知られた話ではありますが、フランスでチーズの名前はそのチーズが生まれた場所の名前(商品名がついたものもありますが、やはり味はそれなりな気が)。
だからマロワ―ルなら北フランスはオー=ド=フランス地方にあるマロワ―ル村で生まれたチーズだし(またはフランスとベルギーにまたがるティエラッシュ地方の、ともいえる)、カマンベールはノルマンディー地方のカマンベール村の生まれ、というわけです。
そのことを知った時、すごくいいなあと思ったんです。その土地の味、ということですよね。
テロワール。
話は戻って食べ比べ。今回は二つ、お酒の風味がついたチーズを買いました。
一つはマロワ―ル。
村の修道院で現在の製法が確立したのがなんと960年!というマロワ―ルは、もともと匂いの強いチーズで、かつしっかりした塩味も感じるのですが、これが日本の古酒と出会うといったいどんな味になるのでしょうか。
いわばクセのあるマロワ―ルと、こちらも年月を重ねてまったりこっくりした日本酒古酒。
お互い個性が強くて、ぶつかり合ってしまうのでは… と心配することなかれ。この二つ、意外にもしっくり合うんです。
どちらの風味が勝つというのではなく、お互いのコクと香りが互いにぶつかり合わず口の中に広がり鼻から抜けて、そして二つの味がまとまっていくという。
お酒が好きな人なら、もしかすると普通のマロワ―ルよりも食べやすいかも?
もう一つは、ウィスキー風味のブルーチーズです。
こちらも、もうブルーってだけで相当個性が強いのですが… 見た目は普通のいわゆる青カビチーズ。しかしこれが一口食べると(わたしはほんのちょっぴり、の一口ですが。ほんの少しずつでないと口の中で青カビの風味が暴れまわるので)、最後に口の中でウィスキーの香りがふわっと漂うんです。
ウィスキーの香りは強すぎず弱すぎず、もったりしたブルーチーズの食感に、日本酒古酒とは違ったシャープさのあるウィスキーが不思議と良く合って。
調べてみると、このブルーチーズにウィスキーを合わせて飲んだり、またこの二つを混ぜて薄く切ったバゲットに塗っていただくタルティーヌのレシピもありました。
実はすでに公認の仲だったんですね!
あとの二つは、どちらも牛のフレッシュチーズですが、身にまとっているものがそれぞれほうじ茶パウダーとごまという和の食材。
すでに飲み物でほうじ茶ラテだとかごまラテがあるくらいだから、きっと乳製品との相性はすでに確かなもののはず。
と思いながら食べてみると、これが想像以上に爽やかなお味。
酸味が効いていて、どこかヨーグルトの風味を思い出させるのはさすがフレッシュチーズでしょうか。
そしてこれが濃い目のほうじ茶パウダーや香ばしいごまに良く合うんです。同じシリーズで抹茶もありましたが、きっと抹茶も相性抜群なんでしょうね。
そして食べ進めるうちに驚いたのは、その中に秘められた隠し味!
なんと、ほうじ茶の方にはキャラメルが、そしてごまの方には梅か桃かプルーンか、とにかくバラ科の果物のペーストと思われるものが真ん中に潜んでいたのです。
これはまさにサプライズ!
苦みの効いたほうじ茶とキャラメル、香ばしいごまと甘酸っぱい果肉ペーストが軽いお味のフレッシュチーズと見事に組み合わされて、ぺろりと食べられてしまいそう。
すべてのチーズを味見し終えた後の、何とも言えないすがすがしさ。
驚きと喜び溢れる日仏マリアージュとの出会いに、思わず「参りました」とでも言いたくなるような気持ちです。こういう体験って、本当に楽しい。
ああ、このお店が家の近くにあったらなあ。
またお店の近くを通ることがあったら、今度は別のマリアージュを試してみよう。